大学村の森が大変!蔓延する"ナラ枯れ"

大学村の森は今、創立以来の大きな危機に直面しています。それは、すでに数年前から信濃町に広がり始めていたナラ枯れ(写真1)が、大学村の森の中でも見つかり、瞬く間に広がりつつあるからです。

 

ナラ枯れとは

 体長5mmほどの小さな昆虫カシノナガキクイムシ(略称カシナガ)が6月

頃にナラ類(コナラ、ミズナラ等)の根元近くに潜入して産卵し、秋から翌年春にかけて幼虫の育成を行うことにより、木に甚大な影響を与えて枯死させる一種の流行病です。枯死の原因は、カシナガの体に付着している 「ナラ菌」 が孔の中で繁殖し、導管を詰まらせ、水の供給を断ち、枯死させるというものです。新成虫は産卵翌年の6〜8月に孔から脱出して、周りの木に孔を掘って潜入するようです。7月下旬から8月半ばにかけて、カシナガの潜入を受けた木はたちまち枯れて葉っぱが変色して、夏なのに ‟紅葉” が始まっているかのように目立つことになります(写真2)。

 

大学村でのナラ枯れの現れ

 8月半ばより、大学村の各所でコナラの大径木に 「ナラ枯れ」 が現れ、急速に広がり出していることが、毎日村内を歩いておられる村民より管理室に報告がありました。それを受けて、管理主任がすぐに村内を見回り、引き続いて理事長の現場視察が行われ、その深刻さが認識されました。とりわけ、E地区とA地区のホウノキ坂周辺で顕著です(写真3)。森林委員会では、8月31日に緊急に対策会議を開き、対応を検討しました。連絡いただいた村民の方の話では、2年ほど前から予兆を感じられていたようですが、この夏、とりわけ8月半ば過ぎから日に日にナラ枯れした木(葉っぱの変色したコナラ)が増え始め、ただならぬ事態に至ったことを直感されました。

 

信濃町周辺におけるナラ枯れ問題

 西日本を中心に2000年代初めから、各地で流行が見られ、対策などが試みられてきました。これまで比較的温暖な地方での流行病と認識されていましたが、ここにきて新潟県南部から長野県北部でも現れ出し、信濃町では斑尾山麓では、コナラなどの枯葉の塊が何か所にもわたって見られます。2016年に旧野尻湖ホテル跡地で大きな木が突然倒れる事故が起こりました。倒れた木はその前に大発生したカシナガに侵されたコナラでした。大きな木だとナラ枯れから倒れるまでに数年かかりますが、枯れた木の枝は折れやすく、その冬には重い雪や風により太い枝が折れて落下することも懸念されます。

 この10年来野尻湖畔の一つの岬、樅が崎周辺の森の手入れをされている信濃町民の話では10年前ほど前に流行したナラ枯れは一度沈静化したが、この数年来再び現れ出し、信濃町では対策費を計上して防除に努めているとのことです。しかし、限られた予算で伐採(写真4)、燻蒸、投薬などを広域的に進めることは難しく、解消の目途は立っていないようです。

 

大学村の森でナラ枯れが広がることの深刻さ

 カシナガがターゲットにする木は、総じて高齢化した老木であることが確かめられています。カシナガに侵されたコナラの30%は枯死するとされていますが、老木が多い大学村の森ではさらに高い率で枯死すると思われます。

 大学村の森は元々は薪炭林として活用され、森に手が入れられて若い木が中心でしたが、大学村に移行してからはほとんど手入れがなされないままに60年近くが経過し、至る所にコナラの大径木が存在し、カシナガの繁殖にとっては格好の条件が整っています。全域にナラ枯れが蔓延する危険性が極めて高いと言えます。

 もう一つのさらに大きな問題は、大学村の森は 「暮らしの森」 であり、道路脇のコナラの倒木により人身事故が起きることが懸念され、また所有地内の大木の倒木は所有者の家屋のみならず、隣接した家屋の損壊にもつながる危険性も危惧されます。大学村として、総力を挙げて、中長期的な視点の下に、緊急の対応が強く求められます。そのためには村民の皆さんのナラ枯れ問題の深刻さへのご理解が必須となります。森林委員会では、緊急にナラ枯れ問題の冊子を作成し、皆様にお届けする予定です。

 

ナラ枯れのコナラを見つけ印をつける取り組み

 問題の深刻さを知ってもらい、今後全村を上げてナラ枯れの防除に向かうには、できるだけ多くの村民の皆さんがナラ枯れの現場を見て、カシナガの潜入を受けたコナラを見つけ出し、マーキングするなどの現状把握の作業が必要と思われます。自らの所有地内のコナラの木の点検も大事だと思います。9月と10月の三連休にそのような現場確認作業を行い、問題を共有する機会を設けたいと考えています。日程など決まれば、お知らせします。百聞は一見に如かずです。是非、ご参加ください。

                          (森林委員会より)

                      

↓写真1:野尻湖縦が岬水辺のナラ枯れ

↓写真2:A地区ホウノキ坂次々と枯れ始めたナラ

↓写真3:カシナガに侵されたナラの根元に落ちたオガクズ

↓写真4:E地区ホウノキ坂ナラ枯れコナラの伐採処理

天池の「水の流れの回復作業と自然観察会」を行いました!

 迷走台風10号の影響を受け、当初8月31日(土)午後に行う予定をしていた天池の水の流れを回復させる作業を延期して、9月1日午前に行いました。幸いにも当日は青空に恵まれ、森林委員以外の村民の皆さんにも参加いただき、総勢12名(応援の子どもさんたちも含め)で道路わきのスイレンの除去、沈下した流木の除去などの作業を行いました。

 作業は3名が天池に入り、胸まで浸かって縦横に張り巡らされたスイレンの根をノコギリで切り、人力で引き抜き、それらをボートに積み込み、陸上班がボートを道路わきに手繰り寄せ、流木やスイレンの根などを道路反対側の谷筋に投棄する作業を行いました。森林委員だけなら、ついついもうこの辺で止めようかとなりがちですが、村民の皆さんの熱心な協力を力に、午前中2時間の作業を楽しみながら進めることができました。ご参加下さった皆さんに感謝申し上げます。

 

 天池には、多くの希少な水生生物、中でもシナイモツゴ(長野県下からはほ

ぼ姿を消した淡水魚)やキタノメダカが生息していることが、K-42の中川光さんの周年調査で明らかにされ、大学村とって(同時に信濃町や長野県にとって

も)貴重な自然資産であることが確認さています。

 大学村の森に降った雨や雪は管理棟裏の湿地等に集まり、天池に流れ込みます。また、地下水となった水もあちこちで染み出して天池に集まります。天池は、大学村の森が育む水が集まる場所であり、森の健全度が現れる場所と言えます。森が育む水がモツゴやメダカやドジョウを育てています。それと共に、天池は本来下流の農家さんが米作りなどに使う水を確保する用水池であり(管理主体は信濃町)、地域につながった存在でもあります。かつて(大学村ができる前)は、天池は地元の子どもたちの格好の遊び場にもなっていたようです。このような天池を消失させることなく、続く世代と地域社会に残して行きたいと願っています。

 

 作業の前後には、事前に採捕した天池に生息する希少な水生植物(ジュンサイや食虫植物のタヌキモなど)、エビ類やメダカなどを見ながら、天池保全の存在意味を考える機会にもなりました。スイレンを除去することによって生まれた水面には、大小のキタノメダカが 「水面を広げてくれてありがとう」 と言わんばかりに泳ぎ出てきたのにしばし見入りました。その数の多さに驚かされました。

 

 この数年の変化をみると、このままでは天池は早晩なくなる(埋め尽くされて陸化する)ことが大いに危惧されます。その大きな原因が道路脇全面に広がった外来種スイレンの繁茂です。その一部だけでも除去することによって水の流れが回復するのかを確かめるために、人力での除去作業を試みました。

 問題は、人海戦術は天池を身近な存在として体感するのにはよいのですが、‟焼け石に水” 的な感も否めません。今後、大学村としても天池の希少な自然的価値を見つめ直し、その保全(重機でのスイレン除去による水路の確保、信濃町との連携など)に力を入れて、急速に埋まりつつある天池の保全に努めることの重要性を改めて体感しました。

              (森林委員:木村文三・加賀 実・田中 克)

第2回野尻湖水辺の生き物観察会の報告

 快晴の真夏の一日、野尻湖畔に子どもたちの歓声が上がりました。8月3日(土)に、野尻湖畔のグリーンスポーツクラブの砂浜に集まった子供たちは、たも網をもって、水辺の小魚や小エビ捕りに夢中になりました。昨年夏に続き、二回目の「野尻湖水辺の生き物観察会」 が行われました。今年は、大学村の子どもさんや村民の皆さんにも呼びかけ、子どもさんを含む8名の村民の皆さんにも参加頂きました。全体では、子どもさん12名と父兄・関係者など20名の皆さんが、子どもを見守りながら、中には童心に帰って子供たちと共にたも網採集に熱中する大人の皆さんも見受けられました。

 この観察会には、遠路高知県から二人、和歌山県から一人の知り合いが駆けつけてくれ、研究のための調査に使う網を駆使して、たも網では採れないコクチバス(北米産のブラックバス)の体長5, 6 ㎝ の稚魚を捕まえ、子どもたちは初めて見るブラックバスの稚魚に見入っていました。

 もう一人のゲスト、長野大学淡水生物学研究センター箱山洋さんは、センターで飼育しているウナギの子ども(クロコ)を生きた状態で持参いただき、野尻湖にも生息しているニホンウナギ(大半は野尻湖漁業協同組合が放流したもの)が生息していること、そして、もし大きくなったウナギを捕まえることができれば、そのお腹に発信機を‟外科手術”的に埋め込んで、そこから発信される電波を人工衛星がキャッチし、研究所で受診すれば、そのウナギがふるさと遠い海に産卵のために戻る道筋がわかるかもしれないと話してもらいました。子供も大人もその話に聞き入り、野尻湖のウナギでの夢の実現の思いをはせる集いになりました。

 大学村の森の整備は、豊かな水を生み出し、野尻湖のニホンウナギの成育にもつながるのではないか、そのことに子供たちも関わる機会としての「野尻湖水辺の生きもの観察会」 を来年も継続して開ければと願っています。

             (大学村A-15, 観察会実行委員会代表、田中克)

2024年「森づくり村民意見交換会」が開かれる

 大学村の森を ‟里山の森” と位置づけ直し、できるだけ多くの村民の皆さんがいろいいろな形で関わる森づくりを進める気運を高めるために、毎年 「山の日」 の前後に 「森づくり村民意見交換会」 を開いてきまました。今年は、8月11日(日)午後に、セミナーハウス前の広場で開きました。

 連日、大学村の行事が立て込み、参加者は少し少なめでしたが、20名前後の皆さんに参加いただき、未来世代に贈り届けられる豊かな森づくりについて、意見交換を行いました。

 2019年に実施したカラマツ人工林の集中伐採後の跡地の手入れの問題(集中伐採の功罪)、再び道路に張り出し始めた危険木の早期の処理の必要性、購入したクサカルゴンの有効な活用、森林委員会と大学村理事会との関係、大学村の森が育む水が溜まる天池の保全、その他森林委員会への要望など、いろいろな意見を出していただきました。

 意見交換に続き、大学村の森をより持続的に保全する確かな流れを生み出す一つの道として、環境省が進める 「自然共生サイト」 に大学村の森を登録する道を探るために、元環境省自然環境局長(現自然公園財団専務理事)で、森里川海アンバサダーを務めておられる鳥居敏男さんをお迎えして、詳しくお話をお聞きする予定でした。あいにく、直前に体調を崩され、ご登壇いただけなくなるとのハプニングに見舞われましたが、事前にお送りただいていた環境省の自然共生サイトに関するパンフレットと、ご準備いただいた資料をもとに、森林委員の田中が分かる範囲で概要を紹介することで応急対応しました。

 事前に、大学村の森全体でなくても、例えば、多くの希少な水生生物が生息する天池を中心に申請しても十分認可されるとの情報を得ていましたが、村民の皆さんからは、できれば大学村全体の森を自然共生サイトして、社会に発信(アピール)することが大事であり、大学村への社会的関心が高まる中で、自然共生とは異なる意図での買い占めなどを予防する上でも意味があるとの意見も出されました。

 今後、森林委員会において、自然共生サイトへの登録の実際や意義などを検討し、しかるべき時期に理事会に提案する方向が確認されました。

7月14日の「じゅんさい採り・天池観察会」報告

天池ジュンサイ採りイベントの報告

 7月14日(日)午前に天池のジュンサイ採りイベントが行われました。天池

では、梅雨後半のこの時期に、ジュンサイが人知れず小さな紅紫色の花を咲か

せ、毎年何人かの方がジュンサイを採り、お吸い物や酢の物にしていただく季

節の風物詩となってきました。今年は、これからの天池の保全を考える上で、

より広く天池の存在を知ってもらうために、森林委員会が主催しました。

 あいにくの小雨となりましたが、総勢11名(見学者も含めて)の皆さんに参

加していただき、実際に5人乗りのボートに乗ってジュンサイ採りを楽しまれ

ました。ジュンサイは、泥の深い池沼で、清水に恵まれた環境に繁茂する水生

植物です。全国的に減少し、長野県では準絶滅危惧種になっていますが、天池

にはたくさん繁茂しています。

 参加していただいた皆さんには、事前に採集した天池の生き物、キタノメダ

カ、タヌキモ(食虫植物)、ヒルムシロなどを見ていただき、次第に埋まりつ

つある天池の保全などに関心を持っていただく機会となりました。

 

能登半島地震災害復興支援チャリティ講演会が開かれました

 

森林委員会より

2024年5月4日(土・みどりの日)午前10時から 野尻高原大学村 管理棟裏の広場で

能登半島地震災害復興支援チャリティ講演会が開かれました。

 

講演1 高嶋弘之氏 (高嶋音楽事務所代表)

ビートルズを日本に紹介したエピソード、現場の人でないと知らない貴重なお話をうかがいました。

講演2 中村浩二氏 (金沢大学名誉教授)

能登半島の里山・里海づくりについて、地元で奔走されてこられたお話をお聞きしました。

 

鈴木信濃町町長を始め大学村外のお客様も多数参加いただき、計76名の参加で盛り上がりました。

受付においたチャリティの募金箱には、71,383円が入っていました。信濃町を通じて、能登町に寄付しました。

また、高嶋様からはビートルズ関連の貴重な資料もお持ちいただき、解説つきで見せていただきました。


「第2弾 森の講演会」と「植樹祭」のご報告

  5月4日(木・祝日)の森の講演会と植樹祭は、五月晴れで爽やかな風が心地よい絶好の条件のもと、村民が56名、村外は信濃町の鈴木文雄町長と町教育長にもご出席いただいて16名、合計72名で開催され盛り上がりました。

 

〇森の講演会 「森は海の恋人農林漁業の明日を拓く

 講師の畠山重篤先生からは、昨年5月に続いて2回目のご講演をいただきました。前回は、森から流れ出し海を豊かにする魔法の物質である「フルボ酸」の話をしていただきました。今回は「森は海の恋人運動」のさらなる大きな前進として、森の腐葉土層で生まれるフルボ酸を大量生産する手法が開発されたという話です。

 森の落葉などを炭にすると出てくる木酢液の中に、フルボ酸が高濃度で見つかりました。このフルボ酸を、鹿児島県で知覧茶やサツマイモなどの農産物に散布してみると、無農薬・無肥料にもかかわらず農産物の収量が大幅アップすることがわかり、すでに事業化も進められているということです。

フルボ酸は、海だけでなく畑も豊かにすることがわかり、これが広まれば食の未来には画期的な変化が起こるという、衝撃的な 講演でした。さらに、フルボ酸の原料は森の落葉だけでなく木のチップなどでもよく、施設も小規模なものでも可能とのことです。このため、森の木は、フルボ酸をつうじて地元山村の農業も助けていくという新たな可能性も見えてきました。先生からは、信濃町でもどうですかというお話がありました。

 今回もいろいろ興味深い話をしていただき、みなさんに大変好評でした。

 畠山先生、ご講演大変ありがとうございました。

※ 畠山重篤氏(現役カキ養殖漁師、NPO法人「森は恋人」理事長、京大フィールド科学教育研究センター社会連携教授)

 

〇「第2回植樹祭」

 講演後、カラマツ集中伐採で明るくなったセミナーハウスの裏手に、参加者みんなでヤマザクラを植樹しました。畠山先生には、お気に入りの木であるミズメ(アズサ)を植えていただき、鈴木町長さんにも記念の植樹をしていただきました。また、村民の方から寄せられたクリを植えました。

何年か後にはヤマザクラの散策の道となることを期待しましょう。

 

 

〇「根腐れ危険木のチェックリスト(その2)」の配布

  森林委員会では、先日の相模原キャンプ場の倒木死亡事故を受けて、注意喚起チラシ「根腐れ危険木のチェックリスト(その2)」を配布しました。

【報告】-きれいに手入れされた区画の見学会-

 11月5日の森林委員会主催のイベント「きれいに手入れされた区画の見学会」は、23名の参加があり大盛況でした。B地区とC 地区の手入れされた庭3ヶ所を見学し、途中でカラマツ集中伐採や危険木伐採の跡地などを見て回るミニツアーです。前日とは違って天気にも恵まれ、紅葉もちょうど真っ盛り、手入れの行き届いたお庭はひときわ輝いて見えました。所有者の方には、どのようなやり方で木を切ったり、お庭の手入れをされたかをご説明いただきました。参加者の皆さんも、庭を見ながら具体的な話を聞いたので、自分の庭の手入れのイメージが沸いたのではないでしょうか。楽しい村内散歩となりました。 所有者の方、ご協力ありがとうございました。また、参加者の方お疲れさまでした。

有志による作業について

【報告】-有志による「天池の浮島撤去の実験」-

 11月4日に行った、有志による「天池の浮島撤去の実験」は、残念ながら失敗に終わりました。浮島をウインチで切断して引っ張る作戦でしたが、浮島は池の底まで泥でつながっていて手に負えませんでした。有志の方の話によると、次に打てそうな手は見当たらず厳しい状況だとのことです。小雨のなか、お手伝いしていただけた方、大変お疲れさまでした。

過去の理事会/委員会よりお知らせは「大学村の近況報告1~4」をご覧ください。

これまで、大学村ホームページを試作してきましたが、2017年6月24日の理事会で正式ホームページとして本格的に運用することを決定しました。つきましては管理者として大学村からいろいろな情報を発信していく所存ですので、今後とも、ご愛顧賜りますようお願いします。  (一般社団法人野尻高原大学村 広報)